監督:グレゴル・ボジッチ 脚本:グレゴル・ボジッチ、マリーナ・グムジ 撮影:フェラン・パラデス
編集:グレゴル・ボジッチ、ベンジャミン・ミルゲ、ジュゼッペ・レオネッティ 音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル、ヤン・ヴィソツキー
出演:マッシモ・デ・フランコヴィッチ、イヴァナ・ロスチ、ジュジ・メルリ、トミ・ヤネジッチ
原題:Zgodbe iz kostanjevih gozdov 英題:Stories from the Chestnut Woods 日本語字幕:佐藤まな 字幕協力:なら国際映画祭
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
[2019年/スロヴェニア・イタリア/スロヴェニア語・イタリア語・/カラー/82分/ビスタ]
詩を奏でるように綴られた、孤独なふたりの夢語り ───
金色と銅色の枯葉の絨毯に彩られる色彩豊かな季節。静寂がささやく栗の森で語られる哀切の余話『栗の森のものがたり』。ケチで不器用な年老いた棺桶職人マリオと、この地を離れることだけを夢見る若い栗売りマルタ。マリオは家を出た息子ジェルマーノと死にゆく妻ドーラのことを、マルタは第二次世界大戦から戻らない夫のことに思いを馳せている…。それぞれ悲しみに包まれていた見知らぬ二人は、栗の森によって結び付けられる。夢、幻影、幻覚が現実の記憶と混在し、それぞれの物語がマトリョーシカのように別の物語に繋がり、「魂が忘れられた場所」に光を灯してゆく。
監督・脚本・編集を手掛けたのは、本作が長編デビューとなるスロヴェニア出身のグレゴル・ボジッチ。フェルメールやレンブラントといったオランダのバロック期や印象派の画家に影響を受けたというボジッチは、35mmとスーパー16mmフィルムを駆使し絵画のような風景を切り取る。使い古しの洗面器にピッチャーや果物、箒や靴、洗濯カゴや紙くずまで何もかもが優しい光に照らされ、ゆっくりと時が流れる森の日常を、陰影深く描き出した独特の映像美。何気ない日常生活のワンシーンさえも最初から最後まで美しい。
すべてのカットに美が宿る映像美で魅せる、すでに古典の趣さえ漂う成熟した珠玉作だ。この秋、スロヴェニアから届いたメランコリックな大人の寓話が、あなたに深い余韻を約束する。
ここは栗の森に囲まれたイタリアとの国境地帯にある小さな村。第二次世界大戦は終結したが長引く政情不安が村人の生活に影を落としたまま、今年もまた厳しい冬がやって来る。人々の多くはここでの生活に見切りをつけ、金を稼ぎにこの土地を離れたが、戻ってくるはずもない家族や隣人をただ待ち続ける、村に残る者もいた。いずれにせよ、ここには夢も、未来もない。あるのは貧困と諦め、そして葉を落とし、金色と銅色で地を美しく染める栗の木々だけだ。
老大工のマリオもまた、家を出たまま戻らない一人息子ジェルマーノからの連絡を待ち続けていた。ジェルマーノはどこで暮らし、何をしているのか。息子の行先を知らないことも妻に伝えず、息子の身を案じる彼女を慰めようともしないマリオ。できるのは、投函することのない息子宛の手紙に想いを綴っては引き出しにしまうこと。まるで自分の心に蓋をするかのように。
ある夜、マリオは病に冒されたまま病状が一向に好転しないドーラを連れ、深夜の乗合馬車で村はずれの診療所を訪れる。だが簡単な診察とわずかな薬を手渡され、追い返される二人。そしてドーラは、なぜ息子に連絡させてくれなかったのかと夫を責めながら息を引き取ってしまう。そして一人残されたマリオ…。
フェルメールの絵画の中に閉じ込められたかのような、凜とした静寂が心揺さぶる。
─── Cineuropa.org
もの悲しく、不思議な短編小説のよう。
─── Variety
心沁みる生と死のあわいの幻想譚。
─── Cineuropa
最初から最後まで美しい。その美しさのなかに充満してくる死の空気。
─── Movie steve
すべてのカットに美が宿る、詩情豊かな映像美。
─── Cinexpressions
絵画のような風景を切り取る美しい映像をスクリーンで観る至福。フィルムの撮影が成し得た素晴らしい作品。
─── The Wee review
監督・脚本・編集:グレゴル・ボジッチ
Gregor Bozic
1984年、スロヴェニア・ノヴァ・ゴリツァで生まれる。幼少期から写真に興味をもち、スロヴェニア国立映画学校、ローマのCentro Sperimentale di Cinematografia、ベルリンのDFFBで映画&撮影技術を学ぶ。2007年、短編『Hej, tovarisi』で監督デビューを果たす。モンテカティーニ国際短編映画祭で最優秀作品賞を受賞。2011年、バティスト・デビッキ監督の短編『Hibou』で撮影監督としてもデビューする。2017年、マティアス・イヴァニシン監督の『Playing Men』、続く2019年『Oroslan』でも撮影監督を務め、さらに評価を得た。2014年には、本作の元となる短編『Suolni iz Trsta』を監督し、スロヴェニア国際映画祭短編部門最優秀作品賞を受賞した。
■プロデューサー・脚本:マリーナ・グムジ
Marina Gumzi
1984年、スロヴェニア・マリボル生まれ。ベルリンDFFBの大学院プログラムNext Waveの卒業生で、リュブリャナ、ベルリン、ルートヴィヒスブルク、パリでドラマツルギー、パフォーマンス研究、映画制作を学ぶ。批評家、クリエイター、プロデューサー、そして脚本家として様々な創作活動を続ける。製作・共同脚本した作品は、ヨーロッパ映画賞、セザール賞、ジョルジュ・ド・ボーレガード賞、ならビエンナーレ審査員賞などを受賞し、トロント-TIFF、ロッテルダムIFF、ゴア、上海、トゥルー・フォルス、クレルモンフェランなどの映画祭、ポンピドーセンター、ニューヨーク映像博物館、リュブリアナ現代美術館などのアートスペースで上映されている。
■撮影:フェラン・パラデス
Ferran Paredes
1975年、スペイン・バルセロナ生まれ。カタルーニャ工科大学IEFCで写真を学ぶ。1998年からロイター通信のフォトジャーナリストとして、その後、ロンドンを拠点にスタッフフォトグラファーとして働く。2003年、ローマのCentro sperimentale di cinematografiaを卒業し、2006年以降、イタリアを中心に多くの短編映画、ドキュメンタリー、長編映画の撮影を担当した。2015年、エドアルド・デ・アンジェリス監督『Perez』でゴールデングローブ賞撮影賞にノミネート。2016年、エドアルド・デ・アンジェリス監督『Indivisibili』で、ダヴィッド・ディ・ドナテッロの撮影監督賞にノミネートされた。
■音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル
Hekla Magnúsdóttir
アイスランド出身の電子音楽演奏家、映画作曲家。10代の頃から音楽を作り始める。当時最も影響を受けたのはバックストリート・ボーイズ。自宅のミニスタジオでテルミンを駆使して、日常生活の中で馴染みの薄い、静かで小さな音を何時間もかけて創作し、メロディックな音楽を紡ぎ出す。「私のアートへのアプローチは、エキサイティングなサウンドを見つける探検家のようなもので、独特の音空間を作り上げることです」と彼女は語る。
■マッシモ・デ・フランコヴィッチ(マリオ役)
Michalina Olszanska
1936年、イタリア・ローマ生まれ。ローマの国立演劇アカデミーで学び、1957年に卒業。同年、ヴィットリオ・ガスマンとジャン・アヌイユの『オルニフル』で舞台デビュー。その後、ピランデッロの『作者を探す6人の人物』、グッドリッチの『アンネの日記』、チェーホフの『三人姉妹』、ダヌンツィオの『La fiaccola sotto il moggio』、シェイクスピアの『I due gentiluomini di Verona』に出演。1964年、フランコ・ゼフィレッリ演出のシェイクスピア『ハムレット』のオラツィオを演じ高い評価を得る。映画では、マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督作『Pasolini, un delitto italiano』、フランコ・ベルニーニの『Le mani forti』、ジャンカルロ・プランタの『Onorevoli detenuti』、ミケーレ・ソルディーヨの『La vita altrui』、ロベルト・アンドーの『Il manoscritto del principe』、パオロ・ソレンティーノの『グレート・ビューティ/追憶のローマ』に主演。2008年から2010年にかけては、ステファノ・ソッリマの『Romanzo criminale – La serie』で老人を演じ、2009年にはドラマ『Boris』で主演を務めた。
■イヴァナ・ロスチ(マルタ役)
Ivana Roscic
1978年、クロアチア生まれ。2004年、アルセン・A・オストジッチ監督作『A Wonderful Night in Split』で映画デビュー。2005年、ダリボル・マタニッチの『I Love You』、プシュチャ・ビストラの『Pušća Bistra』、2007年、ルーカス・ノラの『True Miracle』、ズドラフコ・ムスタッチの『Bastion』、マティヤ・デーベルジュの『Obsession』、2020年、ダニロ・シェルベッジャの『Tereza37』、2022年、ダヴィド・カパック、アンドリヤ・マーデシッチの『Stric』に出演。その他、舞台、テレビシリーズでも活躍中。クロアチアを拠点とするライフスタイル誌「Globus」の「Top 100 最もセクシーなクロアチア女性スター」において10位にランクインした。
■ジュジ・メルリ(ドーラ役)
Giusi Merli
1943年、イタリア・ピサ生まれ。これまで 200以上の演劇・映画作品に出演した。ピサ大学で外国語・文学の学位を取得し、ロシア系アメリカ人の演出家ウラジミール・オルシャンスキーに師事。古典作品(『アンチゴーヌ』『バッカイ』『真夏の夜の夢』『テンペスト』)、現代劇(『ヴォイツェック』)、コミック作品(『ムッシュ・ド・ポンセオーグナック』)などに出演。イタリア国内外で、アルド・ロスターニョ、ジョン・ジェスラン、ポール・ピエラッツィーニ、ダリオ・マルコンチーニ、アンジェロ・サヴェッリ、マルコ・カヴィッキオリ、パオロ・ロッシ、ローランド・ラヴェッロ、パオロ・ヴィルツィ、パオロ・ソレンティーノなどの演出家と組んで活動している。
■トミ・ヤネジッチ(医者トニ役)
Tomi Janezic
1972年、スロヴェニア生まれ。リュブリャナの演劇・ラジオ・映画・テレビアカデミー(AGRFT)で演劇演出の学士号と修士号を取得する。ヨーロッパの演劇監督の一人として挙げられ、演技創造技術の分野における専門家としても国際的に認められている。2004年からはリュブリャナの演技芸術研究スタジオのディレクターも務めており、俳優としては『Uglasevanje』(2005)、『Ode to Preseren』(2001)などで知られる。
■ 受 賞
スロヴェニア国際映画祭2019最優秀作品賞・監督賞・男優賞・撮影賞・観客賞・作曲賞・メイクアップ賞・音響賞・編集賞・デザイン賞・衣装賞/なら国際映画祭2020審査員特別賞/スプリット国際映画祭2020スペシャル・メンション/シネ・イースト国際映画祭2020批評家賞/タリンブラックナイト国際映画祭2019長編作品賞
■ ノミネート
トロント国際映画祭2020ディスカバリー・アワード作品賞/なら国際映画祭2020作品賞/スプリット国際映画祭2020作品賞/上海国際映画祭2020観客賞/ゲント国際映画祭2020最優秀作品賞/グラスゴー国際映画祭2020観客賞/エルサレム国際映画祭2020最優秀初監督作品賞/ポーランド・ニューホライゾン国際映画祭2020グランプリ/インド国際映画祭2019作品賞/サンパウロ国際映画祭2019作品賞/K3国際映画祭2019長編作品賞
特別鑑賞券¥1,500(税込)発売中
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地域 | 劇場名 | TEL | 公開日 | 前売 |
---|---|---|---|---|
東 京 | シアター・イメージフォーラム | 03-5766-0114 | 10/7〜 | ● |
大 阪 | シネ・リーブル梅田 | 06-6440-5930 | 10/27〜 | ● |
京 都 | アップリンク京都 | 075-600-7890 | 10/27〜 | |
名古屋 | 伏見ミリオン座 | 052-212-2437 | 10/27〜 | |
長 野 | 上田映劇 | 0268-22-0269 | 11/3〜 | |
鹿児島 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | 11/8〜 | ● |
愛 知 | 刈谷日劇 | 0566-23-0624 | 11/8〜 | |
静 岡 | 静岡シネ・ギャラリー | 054-250-0283 | 11/10〜 | |
福 岡 | KBCシネマ | 092-751-4268 | 11/14(限定上映) | |
富 山 | ほとり座 | 076-422-0821 | 11/18〜 | ● |
兵 庫 | 元町映画館 | 078-366-2636 | 11/18〜 | ● |
千 葉 | キネマ旬報シアター | 04-7141-7238 | 11/18〜 | |
神奈川 | 横浜シネマリン | 045-341-3180 | 11/18〜 | ● |
神奈川 | シネコヤ | 0466-33-5393 | 11/22〜 | |
栃 木 | 宇都宮ヒカリ座 | 028-633-4445 | 11/24〜 | |
宮 城 | フォーラム仙台 | 022-728-7866 | 11/24〜 | ● 12/1〜 |
京 都 | 出町座 | 075-203-9862 | 12/1〜 | |
群 馬 | シネマテークたかさき | 027-325-1744 | 12/8〜 | |
広 島 | 横川シネマ | 082-231-1001 | 12/9〜 | |
石 川 | シネモンド | 076-220-5007 | 12/16〜 | |
神奈川 | 川崎アートセンター | 044-955-0107 | 12/16〜 | |
長 野 | 松本CINEMAセレクト | 0263-98-4928 | 2024 1/20〜 | ● |
札 幌 | シアターキノ | 011-231-9355 | 近日公開 |
音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル Hekla Magnúsdóttir
アイスランド出身の電子音楽演奏家、映画作曲家。10代の頃から音楽を作り始める。当時最も影響を受けたのはバックストリート・ボーイズ。自宅のミニスタジオでテルミンを駆使して、日常生活の中で馴染みの薄い、静かで小さな音を何時間もかけて創作し、メロディックな音楽を紡ぎ出す。「私のアートへのアプローチは、エキサイティングなサウンドを見つける探検家のようなもので、独特の音空間を作り上げることです」と彼女は語る。